一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス事業)を運営するためには、交通事故を防止し、安全・安心・確実な輸送を実現するために、運行管理者を選任しなければなりません。

運行管理者とは、運行の安全確保を適切かつ効果的に行うため、各営業所に配置される運行管理の専門家で、業務の遂行に必要な権限を与えられて専門的に従事する方のことをいいます。

なお、運行管理者を複数選任する場合や、運行管理補助者を選任する場合を除いて、運行管理者と運転手の兼務はできませんので、ご注意ください。

>>整備管理者についてはこちら

貸切バス事業の運行管理者に求められることとしては、次の事項があげられます。

貸切バス運行管理者に求められること

①運行管理者は、誠意をもって業務の遂行ができる。
②運転手や従業者を統率できる強い指導力をもっている。
③交通事故や災害の防止を図り、自動車の効率的運用が図れる。

④法、政令、省令、告示、通達だけでなく、取扱う旅客に応じて関係する法令の知識に精通している。
⑤自動車の構造、機能、道路交通、人(乗務員等)の心身機能、健康管理に関する知識に精通している。
⑥気象条件や自然現象と自動車の走行上の知識に精通している。

貸切バスの運行管理者の業務については、こちらの資料もご参照ください。
>>旅客自動車運送事業の運行管理に関する基本的な考え方(国土交通省)

旅客自動車運送事業運輸規則第48条では、運行管理者の業務として次の事項があげられています。

貸切バス運行管理者の業務

①必要な場合の車掌の乗務
②異常気象時の乗務員等へ指示・措置
③定められた勤務時間・常務時間の範囲内で乗務割を作成し、乗務指示
④乗務員の休憩・睡眠施設の管理
⑤酒気帯び状態の乗務員等の乗務禁止
⑥乗務員等の健康状態の把握、疾病・疲労・睡眠不足の乗務員等の乗務禁止
⑦長距離運転又は夜間運転の交代運転者の配置
⑧運行中疾病等にかかった場合のな指示・措置
点呼の実施、その記録の保存
⑩運転者ごとに乗務記録をさせ、記録を保存
運行記録計による記録と記録の保存
⑫運行記録計の記録不能車の運行禁止
事故の記録と保存
⑭運行経路における道路・交通状況の事前調査等
運行指示書の作成及び運転者等への指示・保存
⑯選任された運転者以外の運転禁止
乗務員台帳の作成・備え置き
乗務員等への指導・監督・特別な指導及び記録保存
⑲特定運転者に対する適性診断の受診
⑳赤色灯、赤色合図灯等の非常信号の備え
㉑運行管理補助者に対する指導・監督
㉒運転者の要件を備えない者の運転禁止
㉓国土交通大臣が定めた事故防止対策に基づく従業員の指導・監督

貸切バスの運行管理者の業務については、近畿運輸局のこちらの資料もご参照ください。
>>運行管理者の仕事(バス編)

貸切バス事業で必要な運行管理者の人数は、安全の確保に関する業務を事業者と一体となって行う必要性から、営業所の車両数に応じて、安全の確保の関する業務を遂行するために十分な運行管理者の数として定められています。

事業用自動車の車両数運行管理者数
39両まで2人
40両~59両まで3人
60両~79両まで4人
80両~99両まで5人
以降、30両ごとに1名ずつ増員が必要となります。

なお、貸切バス事業の運行管理者は、常勤者でなければなりません。

ただ、この「常勤」というのは、会社で定められた休日以外は会社での業務を行うことをいうのであり、営業所に「常駐」していることまで求められるわけではなく、外出して営業所を不在にすることは可能です。

ただし、この場合、適切な指示等を行うことができるよう連絡体制を整備しておく必要があります。

貸切バス事業の運行管理者が、他の職種等と兼務(兼任)できるかどうかについては、次のとおりとなります。

ただし、兼務可能だからといって兼務する職種が多くなれば、それだけ個々の職種の業務がおろそかになるため、補助者の選任など、業務が疎かにならないよう対策を立てる必要があります。

安全統括管理者や整備管理者との兼務は可能です。

貸切バス事業の運行管理者は、運転手と兼務は可能です。

ただし、運行管理者のうち少なくとも1人は、運転業務に従事せず、運行管理者としての業務に専念する体制を整備する必要があります。

運行管理者は、他の営業所の運行管理者との兼任は不可です。

よって、他社の運行管理者との兼任も当然ながらできないことになります。

例えば、貸切バス事業と都市型ハイヤー事業を同一の営業所で行っている場合、運行管理者の兼任は可能です。

また、貸切バス事業と貨物運送事業を同一の営業所で行っている場合、旅客と貨物の両方の運行管理者の資格を持っている場合は、これも兼任が可能となります。

ただし、必要な運行管理者の数は、複数の運送事業の車両台数の総数に基づいて算出することなりますのでご注意ください。

貸切バス事業では、上記のとおり、運行管理者を最低2名選任する必要がありますが、貸切バス事業の場合、運行管理者試験(旅客)に合格した方のみが運行管理者となることができます。

なお、運行管理者試験の受験資格として、1年以上の運行管理に関する実務経験又は基礎講習の修了が必要となります。

運行管理者資格者証

運行管理者試験について詳しくはこちらをご覧ください。
>>公益財団法人運行管理者試験センター

運行管理者基礎講習について詳しくはこちらをご覧ください。
>>独立行政法人自動車事故対策機構

複数の運行管理者を選任している営業所では、その責任が分散しないように、また、運行管理業務が統治宇された方針で処理、実施されるよう運行管理業務全般を統括する運行管理者を選任しなければなりませんん。

これが、統括運行管理者となります。

貸切バス事業の場合は、最低でも2名の運行管理者が選任されることになりますので、運行管理者のうちいずれか1名の方を統括運行管理者に選任する必要があります。

統括運行管理者についても、選任、解任の届出が必要となります。

貸切バス事業の運行管理者は、最低2名の選任を必要とされていますが、24時間営業をしている場合等、日中夜バスの運行をしていると、どうしても運行管理者2名だけでは、現実的に適切な運行管理を行うことができないため、営業所内で一定の能力を持っている方を「補助者」としてあらかじめ選任することができます。

これが、運行管理補助者の制度です。

運行管理補助者は、運行管理者の指揮監督の下、業務を実施し、営業所における運行管理が完全に実施される必要があります。

運行管理者補助者に対し、代わりに業務を行う者としての資質を高める教育や、業務の監督を行わなければなりません。

運行管理補助者が実施できる業務

点呼の一部(少なくとも運行管理者が3分の1を実施しなければならない。)
②運行指示書に係わる資料作成及び運転者への伝達行為

運行管理補助者を選任する場合の留意事項

運行管理者資格者証を取得しているか、基礎講習を受講している必要があります。
②補助者は運行管理者の補助を行う者であって、運行管理者に代わって運行管理業務を行う者ではありません。
③運転者が酒気を帯びていたり、疲労・疾病等により安全な運行をすることができない、あるいは無免許・無資格運転最高速度違反が確認されたなどの場合は、直ちに運行管理者に報告し、指示を仰がなければなりません。
④補助者の地位と職務権限は、運行管理規程で明確に規定しておく必要があります。また、運行管理者及び運行管理補助者を明確にしておくよう、営業所内にそれぞれの氏名を掲示しておくことが望ましい。
⑤補助者の選任数は、運行管理の業務量を十分に考慮した数とすることが必要です。

なお、貸切バス事業の場合、運行管理補助者の選任、解任の届出が必要となります。

運行管理者を選任又は解任した時は、選任(解任)後15日以内に、管轄の運輸支局へ届出をしなければなりません。

新規許可の場合には、運輸開始前又は同時に届出を行います。

運行管理者選任届出の添付書類

①運行管理者資格者証の写し