貸切バス事業を開始するためには、道路運送法に基づく事業許可、運賃・料金の届出等が必要となります。
人、車両、施設、設備、安全投資、資金計画等さまざまな要件をクリアした上で、それらの資料を整備して申請書類を作成し、運輸局に許可申請をしなければなりません。
ここでは、一般貸切旅客自動車運送事業の許可を取得するにあたっての主な要件を説明させていただきます。
人に関する要件
事業を安全かつ適切に運営できるよう、所定の要件を満たす安全統括管理者、運行管理者、整備管理者、運転手の選任が必要となります。
安全統括管理者
法改正により、平成30年4月1日から貸切バス事業を行うすべての事業者に、運輸安全マネジメントに係る安全管理規程の届出と安全統括管理者の選任が義務付けられることになりました。
安全統括管理者は、輸送の安全を確保するため、運行管理者・整備管理者を統括し、安全管理体制に必要な手順及び方法の確立・実施・維持・改善を行います。
安全統括管理者となるには、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあって、かつ、運行の安全確保に関する業務、点検・整備の管理に関する業務又はこれらの業務等を管理する業務を通算して3年以上従事した経験を有する必要があります。
なお、要件を満たしていれば、代表者や役員、運行管理者、整備管理者等との兼任が可能となっています。
新規事業者については、安全統括管理者の要件を満たす方を配置できているかの審査を受け、許可後運輸開始までに、安全統括管理者選任と安全統括管理規程の届出が必要です。
>> 安全統括管理者の資格要件など詳しくはこちらをご覧ください。
運行管理者
輸送の安全確保を適切かつ効果的に行うため、貸切バス事業の開業にあたっては常勤の運行管理者の選任が義務付けられています。
運行管理者の必要数は、営業所の車両数により決まっており、貸切バス事業の場合、39両までで2人の選任が必要となっています。
なお、運行管理者は、整備管理者との兼務は可能ですが、営業所において運行を管理する者として、原則として運転者との兼務は認められていません。
ただし、運行管理者が2名以上いる場合等、1人がバスを運転する際に他の運行管理者が点呼可能である場合には、運転者との兼務も認められます。
なお、貸切バス事業の運行管理者は、運行管理者試験(旅客)に合格した方に限られます。
運行管理者の選任と併せて、運行管理規程の作成が必要です。
>> 運行管理者の資格要件など詳しくはこちらをご覧ください。
整備管理者
バスを常に安全に走らせるために、バスの点検や整備、車庫の管理等をするための専門知識を有する者として、常勤の整備管理者の選任が義務付けられています。
整備管理者は、営業所に1人いればよく、運転手との兼務が可能です。
整備管理者の選任と併せて、整備管理規程の作成が必要です。
>> 整備管理者の資格要件など詳しくはこちらをご覧ください。
運転者
申請する車両(バス)の台数や大きさに応じた免許を取得した運転者を確保しなければなりません。
5台のバスで事業を始めるのであれば、5人の運転者が必要です。
なお、下記に該当する方については選任できません。
①日々雇い入れられる方
②2月以内の期間を定めて雇い入れられる方
③試用期間中の方(14日を超えて使用するに至った方を除く)
④14日未満の期間ごとに賃金の支払いをを受ける方
>> 貸切バス事業に必要な運転者について詳しくはこちらをご覧ください。
車両に関する要件
最低車両台数
営業所を要する営業区域ごとに3両以上、ただし、大型車を1両でも使用する場合は5両以上の車両が必要となります。
営業区域ごとですので、大阪府が営業区域の場合は、大阪府にある複数の営業所の車両数を合計した車両数が最低車両数に達していればよいことになります。
なお、車両数が3両以上5両未満での申請の場合は、許可に際して中型車及び小型車を使用しての輸送に限定する旨の条件が付されます。
事業用自動車
車種区分
バス事業については、乗車定員が11名以上の車両を用意する必要がありますが、車両の大きさや乗車定員によって、下記車種区分が定められています。
大型車・・・車両の長さ9m以上又は旅客席数50人以上
中型車・・・大型車、小型車、コミューター車以外のもの
小型車・・・車両の長さ6m以上8m未満で、かつ旅客席数33人以下
コミューター車・・・車両の長さ6m未満で、かつ旅客席数14人以下
この車種区分は、営業区域に必要な最低車両数を判断する際に利用されますが、運賃の設定もこの車種区分ごとに設定されています。
事業用自動車
使用する車両については、下記要件を満たさなければなりません。
①申請者に使用権原があること(車検証、売買契約書、リース契約書等により証明)
②中古車の場合、定期点検整備を実施していること(運輸開始時に定期点検整備記録簿を提出)
万一、定期点検整備を実施していなかった場合は、運輸開始前に12ヶ月点検を行い、当該点検整備記録簿と
施設(営業所・車庫)に関する要件
貸切バス事業を運営するには、適切な規模や設備を有した営業所、休憩・仮眠施設、自動車車庫が必要となります。
営業所
貸切バス事業の営業所とは、恒常的に運行管理を行う施設のことをいいます。
①営業区域内(府県単位)にあること。
なお、複数の営業区域を有するものにあってはそれぞれの営業区域内にあること。
②申請者が、土地、建物について3年以上の使用権原(自動更新でも可)を有すること。
③農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令の規定に抵触していないこと。
④事業計画を的確に遂行するに足るものであること。
なお、賃貸マンション等の一室を営業所として使用する場合は、契約書に旅客運送業の事務所として使用可能であることを契約書等に明記しておく必要があります。
また、建物の所在地によっては、用途制限により、貸切バス事業の営業所として使用することができない地域もありますので、事前に当該所在地の用途地域について確認するようにしてください。
>> 貸切バス事業の営業所・休憩仮眠施設について詳しくはこちら
休憩・仮眠施設
貸切バス事業の休憩施設は、運転者の疲労回復と安全確保のために重要な施設です。
営業所又は車庫に併設させることが基本ですが、どうしても併設できない場合は、別の場所に設置することもできます。
①原則として、営業所又は自動車車庫に併設するものであること。
ただし、併設できない場合は、営業所及び自動車車庫のいずれからも直線2㎞の範囲内にあること。
②乗務員が有効に利用することができる適切な施設であること。
③申請者が土地、建物について3年以上の使用権原(自動更新でも可)を有するものであること。
④農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令の規定に抵触していないこと。
>> 貸切バス事業の営業所・休憩仮眠施設について詳しくはこちら
自動車車庫
貸切バス事業の車庫は、運送業の事業活動で使用する車両を保管する場所のことをいいます。
①原則として営業所に併設するものであること。
併設できない場合は営業所から直線距離で2㎞の範囲内にあって運行管理をはじめとする管理が十分可能であること。
②他の用途に使用される部分と明確に区画されていること。
③車両と自動車車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保され、かつ、営業所に配置される事業用自動車すべてを収容できるものであること。
④農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令の規定に抵触していないこと。
⑤申請者が、土地、建物について3年以上の使用権原(自動更新でも可)を有するものであること。
⑥事業用自動車の出入りに支障のない構造であり、前面道路が車両制限令に抵触しないものであること。
なお、前面道路が私道の場合にあっては、当該私道の通行に係る使用権原を有する者の承認があり、かつ、当該私道に接触する公道が車両制限令に抵触しないものであること。
事業用自動車の点検、整備及び清掃のための施設が設けられていること。
貸切バス事業の車庫の場合、車両を清掃するための水道設備の設置が必要とされています。
申請時には、実際に水道が使用可能の状態かどうか確認されますので、水が実際に出ることを確認しておきましょう。
また、営業所等と異なり、屋根のない車庫の場合であれば、市街化調整区域内でも大丈夫です。
ただ、土地の地目が「田」や「畑」となっている場合には、農地法の規制を受けますので、そのままでは車庫として使用できませんのでご注意ください。
>> 貸切バス事業の自動車車庫について詳しくはこちら
営業所・車庫等の現地確認
平成25年10月から、貸切バス事業の許可時に営業所や車庫の現地確認が行われています。
安全投資に関する要件
平成29年4月1にちから、貸切バス事業の許可申請の際に、次回更新時までの安全投資に関する計画と事業収支見積書について審査されることになっています。
安全投資計画
安全投資計画とは、新規許可から次回更新時まで6年間の事業年度ごとの安全投資(車両の確保、ドラレコ・デジタコの導入、運転者教育、車両ごとの整備計画、運輸安全マネジメント評価等の実施など)に関する計画で下記内容を書面にまとめたものです。
①更新までの期間における事業の展望
②更新までの期間に実施する事業及び安全投資計画の概要
③運転者、運行管理者、整備管理者の確保予定人数
④車両確保計画及び費用
⑤車両の点検及び整備に関する計画及び費用
⑥ドライブレコーダーの導入計画及び費用
⑦デジタルタコグラフの導入計画及び費用
⑧初任運転者及び高齢運転者に対する適性診断の受診計画及び費用
⑨その他安全の確保に対する投資計画
なお、上記のうち、④~⑧については、車両確保計画等から生じる最低現必要な費用を下回る計画となっている場合には、許可を受けることができません。
>> 安全投資計画について詳しくはこちら
事業収支見積書
事業収支見積書は、運輸局ごとの平均稼働日数及び平均稼働率から導き出される営業収益等による収入と安全投資計画から導き出される費用を含む支出による収支見積もりを記載したものです。
この収支見積りも、年度ごとの作成が必要です。
①営業収益(運送収入・運送雑収・その他)
②営業費用(運転者に係る給与・手当・賞与・法定福利費・厚生福利費・健康診断に係る費用、その他人件費、その他運送費、適正化機関負担金など)
③営業外収益
④営業外費用
⑤他事業からの繰入
これらの内容が安全投資計画に従って事業を遂行するにあたって、十分な経理的基礎を有しているかどうかが審査の対象となります。
①安全投資に係る費用について所要の単価を下回る単価に基づく収支見積りとなっていないこと。
②事業収支見積書について計画期間中毎年連続で赤字になっていないこと。
③許可を申請する年の直近1事業年度において申請者の財務状況が債務超過ではないこと。
資金に関する要件
資金計画
資金計画については、下記のような基準があり、事前に正確な所要資金を算定して、必要な自己資金を、許可までの間常時確保していなければなりません。
①所要資金の見積りが適切であり、かつ、資金計画が合理的かつ確実なものであること。
②所要資金の50%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金が、申請日以降常時確保されていること。
貸切バス事業の開業に必要な所要資金一覧
貸切バス事業の開業資金として計上する必要がある資金項目は下記のとおりです。
資金項目 | 必要資金額の計算方法 |
---|---|
車両取得費用 | 一括購入の場合・・取得価格全額 分割購入の場合・・頭金及び6ヶ月分の分割金 リースの場合・・6ヶ月分のリース料 |
営業所・駐車場費用 | 一括購入の場合・・取得価格全額 分割購入の場合・・頭金及び6ヶ月分の分割金 賃貸の場合・・6ヶ月分の賃料 |
人件費 | 役員報酬、給与、手当・・2ヶ月分 社会保険料、労働保険料・・事業主負担分の2ヶ月分 福利厚生費・・2ヶ月分 |
燃料費 | 月間走行距離(㎞)÷1ℓ当たり走行距離(㎞)×1ℓ当たり単価(円)×2ヶ月分 |
油脂費 | 燃料費の3% |
修繕費 | 外注修繕費、自家用修繕費、部品費、タイヤチューブ費等の2ヶ月分 |
機械器具・什器備品費 | 事務所の備品、整備器具取得価額 |
保険料・租税公課 | 自賠責保険料、任意保険料、自動車重量税、自動車税、環境性能割、登録免許税(9万円)の1年分 |
その他経費 | 旅費、備品、消耗品費、水道・光熱費、広告宣伝費等の2ヶ月分 |
創業費等 | 看板、広告宣伝費等の全額 |
法改正により、平成25年10月1日から車両をすべて最初から所有している場合で1,000万円程度の自己資金が必要となります。(自己資金は、各事業者の状況により異なります)
>> 所要資金の算定方法について詳しくはこちらをご覧ください。
その他の要件
法令遵守
法令遵守の観点から、下記基準を満たしていない事業者は、許可を受けることはできません。
①申請者又はその法人の代表権を有する常勤の役員は、一般貸切旅客自動車運送事業を適正に遂行するために必要な法令知識を有しかつその法令を遵守すること(法令試験の合格)。
②健康保険法、厚生年金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法(以下、社会保険等という。)に基づく社会保険等加入義務者が社会保険等に加入すること。
③申請者又は申請者が法人である場合にあってはその法人の義務を執行する常勤の役員が、道路運送法、貨物自動車運送事業法等の法令遵守の点で問題のないこと。(申請日前1年以内に輸送施設停止処分等の行政処分を受けている場合は注意)
>> 遵守すべき法令について詳しくはこちら
>> 貸切バス事業の法令試験について詳しくはこちら
損害賠償保険
旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運行により生じた旅客その他の者の生命、身体又は財産の損害を賠償するために講じておくべき措置の基準を定める告示で定める基準に適合する任意保険又は共済に計画車両の全てが加入する計画があること。
生命または身体の賠償・・・一人につき無制限のもの
財産の賠償・・・一事故につき200万円以上(免責額30万円以下)のもの
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