貸切バス事業を始めるには、最低でも3名(大型バスを導入する場合は5名)の運転者が必要となります。
ここでは、貸切バス事業の運転者の選任要件などについて解説していきます。
貸切バス運転者として選任できない場合
旅客自動車運送事業運輸規則第36条では、下記に該当する方を運転者として選任してはならないと定めています。
①日々雇い入れられる方
②2月以内の期間を定めて使用される方
③試みの使用期間中の方(14日を超えて引き続き使用されるに至った方を除く。)
➃14日未満の期間ごとに賃金の支払いを受ける方
貸切バス運転者に対する指導・教育
運転者に対しては、遵守すべき事項に関する知識のほか、運行の安全を確保するために必要な運転に関する技能及び知識を習得することを目的とし、運行管理者は、運転者に対する適切な指導及び監督を行わなければならないとされています(一般的な指導・監督)。
また、特定の運転者(初任運転者・準初任運転者・事故惹起運転者・高齢運転者)については、一般的な指導・監督とあわせ、それぞれ特定の内容による指導をしなければなりません。
初任運転者 | 初めてバス運転者に選任する前に特別な内容で指導をする必要があります。 |
準初任運転者 | 既に運転者として選任されているが、直近1年間に乗務したことのあるバスよりも大型のバスに乗務させる場合、その常務の前に特別な内容で指導をする必要があります。 |
事故惹起運転者 | 事故を引き起こした後、再度バスに乗務させる前に特別な内容で指導をする必要があります。 |
高齢運転者 | 適正診断結果が判明した1ヶ月以内に、適性診断結果を踏まえ、身体機能の変化、安全な運転の方法などについて指導をする必要があります。 |
運転者に対して行う指導及び監督の指針についてはこちらをご確認ください。
>> 旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針
貸切バス運転者の適性診断の受診
初任運転者、事故惹起運転者、高齢運転者については、上記の特別指導のほかに、それぞれに対応した適正診断の受診も必要となります。
なお、貸切バス事業については、他社で過去に貸切バス事業の運転者として選任されていた場合であっても、自社で新たに雇用した場合は、必ず、初任診断(事故惹起運転者については「特定診断」、高齢運転者については「適齢診断」)を受信させなければなりませんのでご注意ください。
種 類 | 対 象 | 受信時期 |
一般診断 | 任意 | 任意 |
初任診断 | 運転者として常時選任するため新たに雇い入れた方 | 当該旅客自動車運送事業者において、事業用自動車の運転者として選任する前(やむを得ない場合は乗務開始後1ヶ月以内) |
適齢診断 | 65歳以上の方 | 65歳に達した日以後1年以内に1回、その後75歳に達するまで3年以内毎に1回 75歳に達した日以後1年以内に1回、その後1年以内ごとに1回 |
特定診断Ⅰ | ①死亡または重傷事故を起こし、かつ、当該事故前の1年間に事故を起こしたことがない方 ②軽傷事故を起こし、かつ、当該事故前の3年間に事故を起こしたことがある方 | 当該事故を起こした後、再度事業用自動車に乗務する前 |
特定診断Ⅱ | 死亡又は重傷事故を起こし、かつ、当該事故前の1年間に事故を起こした方 | 当該事故を起こした後、再度事業用自動車に乗務する前 |
貸切バス運転者の選任手順
運転者は雇用してすぐにバスの乗務を行えるわけではありません。
上記初任運転者教育や適性診断の受診を含む、諸手続きを終えた後でなければ選任することはできません。
運転手を雇用してから選任するまでの流れについては、次のようになります。
- 運転者を雇用(社会保険・労働保険への加入)
雇用の際には雇用契約書を作成し、所定の期間内に社会保険及び労働保険の加入手続きを行ってください(適用対象の場合)。また、36協定(サブロク協定・法定労働時間を超えて残業できるための取り決め)を労働基準監督署に提出します。
- 運転記録証明書を取得
過去の違反・事故歴等の確認のため、自動車安全運転センターで運転記録証明書を取得しましょう。取得までには、10日程度かかります。
- 健康診断及び適正診断の受診
雇入時の健康診断と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)で初任診断等の適性診断を受診させましょう。
- 初任運転者教育(座学・実技)
新たに雇用した運転者に座学(10時間)・実技(20時間)の初任者運転教育を行います。これらの記録を3年間保存(ドライブレコーダーの記録含む)しておかなければなりません。
- 運転者台帳への記録
運転者台帳を運転者ごとに作成し、必要事項を記入した上で3年間保管しなければなりません。
②~➃ついて、特に順序は決まっておりませんが、すべてを不備なく実施しなければ運転者として選任することはできませんので、ご注意ください。
なお、これらの遵守すべき事項について違反が発覚した場合は、行政処分を受けることになります。
貸切バス運転者の労働時間の基準
貸切バス事業の運転者の労働時間については、労働基準法等の関係法令を守らないといけないのは当然のことですが、旅客の安全確保と運転者の労働条件の向上を図るという観点から、労働基準法では規制の難しい拘束時間、休息時間、運転時間等の基準が別途定められています。
これが「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」と呼ばれているものです。
改善基準告示(令和6年4月1日版)の概要は下記のとおりとなります。
1年、52週間の 拘束時間 | 【1年】 原則:3,300時間以内 例外:3,400時間以内 【52週間】 原則:3,300時間以内 例外:3,400時間以内 |
1ヶ月、4週平均1週の 拘束時間 | 【1ヶ月】 原則281時間以内 例外294時間以内(年6ヶ月まで) ※281時間超は連続4ヶ月まで 【4週平均1週間】 原則:65時間以内 例外:68時間以内 ※65時間超は連続16週まで |
1日の拘束時間 | 1日(始業時間から起算して24時間をいう。)の拘束時間は13時間以内とし、週3回までは15時間まで |
2日平均1日の 運転時間 | 2日を平均した1日当たり(2日平均1日)の運転時間は9時間以内 |
4週平均1週の 運転時間 | 4週間を平均した1週間当たり(4週平均1週)の運転時間は40時間以内 |
連続運転時間 | 連続運転時間:4時間以内 中断時間(休憩):30分以上(連続10分以内の分割でも可) |
1日の休息時間 | 連続11時間与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない。 |
「拘束時間」とは、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む。)の合計時間、すなわち、始業時間から終業時間までの使用者に拘束される時間のことをいいます。
また、「休息時間」とは、使用者の拘束を受けない時間帯、つまり、前の勤務修了時間と次の勤務の始業時間までの間にあって、運転者が疲労回復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、運転者の自由な判断にゆだねられる時間のことをいいます(「休憩時間」や「仮眠時間」は含みません)。
詳しい内容については下記をご確認ください。
>> バス運転者の労働時間等の改善基準のポイント(厚生労働省パンフレット)
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