貸切バス事業は、新規許可を受けたからといって、すぐに事業を始めることができるわけではありません。
許可を取得してから運輸開始(事業開始)するまでには、事業車両のナンバー変更や運転手の雇用及び教育など、多くの手続きを行わなければなりません。
幣事務所でお手伝いさせていただいたお客様の経験からいいますと、許可から運輸開始までには、平均1ヶ月程度といったところでしょうか。
そこで、ここでは、許可後、許可証を受領してから、運輸開始(事業開始)まで、どのような手続きが必要であるかについて、そのイメージをお伝えさせていただきます。
許可前にできることは少ないですが、事前に手続き内容を把握しておくことで、スムーズに運輸開始できるよう準備しておきましょう。
登録免許税の納付
管轄の運輸支局から許可証等を受け取ったら、許可証と一緒に交付される納付書を用いて、郵便局・税務署・銀行のいずれかで、許可から1ヶ月以内に登録免許税9万円を納付します。
納付後、領収証を「登録免許税領収証書届出書」に貼り付けて近畿運輸局へ郵送します。
人に関すること(採用・労務・届出関係)
安全統括管理者・運行管理者・整備管理者の選任
次に安全統括管理者・運行管理者・整備管理者を選任し、運輸開始までに、管轄の運輸支局の輸送部門と整備・保安部門に選任届出書に下記添付書類を添えて提出します。
①安全統括管理者在籍証明書(自社証明)
②安全管理規定
①運行管理者資格者証の写し
①実務経験証明書(選任届への証明でも可)
②整備管理者選任前研修修了証の写し
③整備管理規程の写し
万一、許可後、運行管理者又は整備管理者を変更しなければならなくなった場合は、速やかに近畿運輸局の担当者へ連絡し、変更の理由について説明をしなければなりません。
その上で、変更が可能であると判断された場合、変更理由書に運行管理者就任承諾書及び資格者証を添付して提出します。
健康診断の受診
運転者を雇用する前又は雇用後速やかに、健康診断を受診させてください。
なお、入社前3ヶ月以内に、入社時に必要な項目を含む健康診断を受診している場合は、改めて受診する必要はありませんが、運転業務の性質上、輸送の安全という観点から、現時点での心身の状態を確認する上で受診させることが望ましいです。
入社後は、1年以内ごとに1回、健康診断を受診し、健康診断受診票を5年間保管しておかなければなりません。
労働保険・社会保険への加入
貸切バス事業者は、原則として、労働保険・社会保険への加入義務がありますので、運転手を雇用後、速やかに手続きを行ってください。
運転手等の労働保険・社会保険の加入義務及び加入手続きなどについては、下記当サポートデスクのページをご覧ください。
>>運送業の労働保険・社会保険への加入について
①保険関係成立届(労働保険)の写し
②新規適用届(社会保険)の写し
※上記書類が提出できない場合は、その他の労働保険・社会保険に加入していることが分かる書類が必要となります。
運転者の事故歴の把握と適正診断の受診
運転者を新たに雇用した際には、当該運転者について、自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書又は運転記録証明書等により、事故歴を把握(少なくとも過去3年間)し、事故惹起者に該当するか否かを確認する必要があります。
そして、適性診断認定機関が行う適正診断を受診させなければなりません。
通常は初任診断を受診することになりますが、65歳以上で入社される方には適齢診断、事故惹起者(過去3年以内に事故の経験がある方等)に該当する方は特定診断を受診させる必要があります。
適性診断は、ただ受ければよいというものではなく、適正診断の結果に基づき、個々の運転者の運転特性を踏まえたうえでの適切な指導を行うために活用しなければなりません。
適性診断は、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)で行われていますが、その他にも下記の機関で行われています。
初任運転者に対する特別な指導
貸切バス事業者は、運転者として新たに雇い入れた方(初任運転者)に対して、下記の特別指導を行わなければならないことになっています。
①~⑥について合計10時間以上(座学指導)、⑦について20時間以上(実技指導)の実施が求められます。
①事業用自動車の安全な運転に関する基本的事項
②事業用自動車の構造上の特性と日常点検の方法
③運行の安全及び旅客の安全を確保するために留意すべき事項
④危険の予測及び回避
⑤安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
⑥ドライブレコーダーの記録を利用した運転特性の把握と是正
⑦安全運転の実技
なお、特別指導記録を作成し、使用したテキスト、資料を添付の上、3年間保管しておく必要があります。
また、⑦におけるドライブレコーダーの記録についても3年間保管が必要です。
就業規則・36協定の届出
常時10人以上雇用する事業者については、就業規則を作成して、最寄りの労働基準監督署へ提出する必要があります。
最低車両数から始められる事業者様については必要ありませんが、常時10人を雇用するに至った場合は、速やかに提出してください。
36協定(サブロク協定)は、雇用人数に関係なく、法定労働時間を超えて残業させる場合に提出が必要となりますので、こちらは、どの事業者様も必ずご提出してください。
36協定を提出せずに、残業をさせた場合は、労働基準法違反となりますのでご注意ください。
なお、36協定には有効期間がありますので、必ず有効期間が切れるまでに更新手続きを行うようにしてください。
事業用車両のナンバー変更
貸切バス事業が許可されましたら、事業用車両の事業用のナンバー(緑ナンバー)への変更が必要となります。
この緑ナンバーへの変更には、「事業用自動車等連絡書」という書類が必要となり、大阪運輸支局(大阪府の場合)でのみ交付されますのでご注意ください。
ですので、許可証の受け取り時に、大阪運輸支局に備え付けてある緑色の用紙(事業用自動車等連絡所)に必要事項を記入して、大阪運輸支局の確認印を押印してもらっておくことをお勧めします。
ただ、この事業用自動車連絡書の有効期間は1ヶ月となりますので、新車登録等でバスの入庫が遅れる場合等は、入庫のタイミングで事業用自動車等連絡書を取得してください。
事業用自動者等連絡所を取得しましたら、その他必要書類を揃えて、管轄の検査登録事務所等で緑ナンバー取得の手続きをしてください。
>>近畿圏の自動車登録手続きの管轄はこちら
任意保険への加入・変更手続き
事業用ナンバーに変更後は、速やかに、任意保険の加入又は変更手続きを行い、車内及び車外に必要な表示を行います。
事業用車両への車内・車外表示の準備
貸切バスの車両には、旅客自動車運送事業運輸規則で定められた表示を車内と車外に行わなければなりません。
〇車内(旅客から見やすい場所に表示)
・事業者の氏名又は名称及び車両ナンバーを表示したもの
・禁煙であることが分かる表示
〇車外(外から見てはっきりと文字が判別できるように表示)
・「貸切」の文字
・事業者名
※色や大きさに決まりはありませんが、外から見てはっきりと分かる色や大きさのものを採用してください。
①事業用車両の自動車車検証の写し
②点検整備記録簿(中古車の場合)
※直近の12ヶ月点検及び当該12ヶ月点検以降の3ヶ月点検のもの
③任意保険証券の写し
※保険証券が届いていない場合は、その他の加入したことが分かる書類
営業所と車庫の整備
営業所や車庫の設備関係については、許可審査の現地確認の際に近畿運輸局の担当者が確認しますので、概ね準備できているものと思いますが、改めて必要な備品関係(アルコールチェッカー、映像・音声が記録できる機器含む)が用意できているかを確認します。
また、営業所には、運送約款と運賃料金表を営業所内に掲示しなければなりません。
帳票類の整備
貸切バス事業を行うにあたっては、運行指示書や乗務日報、点呼記録簿など、多くの帳票類を作成し保管をしなければなりません。
これらの帳票類の整備を行います(弊事務所でご依頼いただいたお客様には、許可後、ひな形一式をお渡しさせていただいております)。
>>貸切バス事業で管理・保存が必要な帳票類についてはこちらをご覧ください。
営業所・車庫・車両の写真撮影
運輸開始の準備が整いましたら、運輸局への提出用の営業所及び車庫の写真撮影を行います。
・営業所全景
・営業所内部(事務室・休憩室・点呼執行場所など)
・映像と音声の両方が記録できる機器の設置場所が分かるもの
・運送約款及ぶ運賃料金表の掲示場所が分かるもの
・事業用車庫全景(すべての車両を格納したもの及び格納していないものを含む)
・前面道路から車庫の出入口を写したもの
・事業用車両の車外表示(前後左右、社外表示の場所・表示内容が確認できるもの)
・事業用車両の車内表示(禁煙マーク、事業者名称及び車両ナンバー表示の掲示場所・表示内容が分かるもの)
運輸開始届の提出
準備がすべて完了して初めて、運輸開始(事業開始)することができます。
運輸開始しましたら、30日以内に運輸開始届に添付書類を添えて、運輸支局の輸送部門へ提出します。
なお、一般貨物運送(許可後1年)、一般乗用(許可後6ヶ月)には許可から運輸開始までの期間制限がありますが、貸切バス事業については、運輸開始までの期間制限がありません。
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