一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス事業)を運営するためには、交通事故を防止し、安全・安心・確実な輸送を実現するために、整備管理者を選任しなければなりません。

整備管理者とは、道路運送車両法(以下、本ページでは「法」といいます。)の規定に基づき、その使用する自動車の点検・整備に関する管理・責任体制を確立し、自動車の安全確保、環境保全を図るために必要な権限を使用者から与えられている方のことをいいます。

>>運行管理者についてはこちら

道路運送車両法施行規則第32条では、整備管理者の業務として次の事項があげられています。

貸切バス運整備管理者の業務

日常点検の実施方法を定めること。
②日常点検の結果に基づき、運行の可否を決定すること。
定期点検を実施すること。
④日常点検・定期点検のほか、随時必要な点検を実施すること。
⑤日常点検・定期点検・随時必要な点検の結果、必要な整備を実施すること。
⑥定期点検及び⑤の整備の実施計画を定めること。
⑦点検整備記録簿その他の点検及び整備に関する記録簿を管理すること。
自動車車庫を管理すること。
⑨①~⑧に掲げる事項を処理するため、運転者、整備員その他の者を指導し、又は監督すること。

使用者は、整備管理者がこれらの業務を円滑に遂行することができるようにするため、整備管理者に対し必要な権限を与えることが義務付けられています。

整備管理者制度の概要についてはこちらのページもご参照ください。
>>点検・整備の推進(国土交通省WEBサイト)

一定台数以上に事業用自動車を使用する自動車の使用者はその使用の本拠ごとに、一定の要件を備える「整備管理者」を選任しなければならないとされています。

貸切バス事業の場合は、1台以上から整備管理者の選任が必要となります。

必要な人数についてですが、車両が何台であっても最低1人が選任されていればよいことになっています。

とはいえ、所有している車両台数によっては、1人では管理することは難しい場合もありますので、補助者を選任する等、適切な人数の整備管理者を選任する必要があります。

なお、貸切バス事業の整備管理者は、常勤者でなければなりません。

ただ、この「常勤」というのは、会社で定められた休日以外は会社での業務を行うことをいうのであり、営業所に「常駐」していることまで求められるわけではなく、外出して営業所を不在にすることは可能です。

ただし、この場合、適切な指示等を行うことができるよう連絡体制を整備しておく必要があります。

貸切バス事業の整備管理者が、他の職種等と兼務(兼任)できるかどうかについては、次のとおりとなります。

ただし、兼務可能だからといって兼務する職種が多くなれば、それだけ個々の職種の業務がおろそかになるため、補助者の選任など、業務が疎かにならないような体制を整える必要があります。

安全統括管理者や運行管理者との兼務は可能です。

貸切バス事業の整備管理者は、運転手と兼務は可能です。

運行管理者は、他の営業所の整備管理者との兼任は可能です。

ただし、他の会社の整備管理者との兼任はできず、あくまでも同じ会社内でのことになります。

ただ、他の営業所との兼任によって、適切な車両管理の遂行に支障が生じると認められる場合、営業所ごとに整備管理者を選任するように運輸局から指導される場合もありますので、兼任によって業務過多とならないよう適切に管理を行う必要があります。

現実的には、複数の営業所での兼任は難しいため、お勧めいたしません。

例えば、貸切バス事業と都市型ハイヤー事業を同一の営業所で行っている場合、整備管理者の兼任は可能です。

また、貸切バス事業と貨物運送事業を同一の営業所で行っている場合も兼任が可能となります。

整備管理者となるための要件は、旅客運送事業も貨物運送事業も同じで、下記の①又は②を満たしていることです。

整備管理者の資格要件

①整備の管理を行おうとする自動車と同種の自動車の点検又は整備又は整備の管理に関する2年以上の実務経験を有し、かつ整備管理者選任前研修を修了していること

②自動車整備士技能検定(1級~3級)に合格していること。

②については検定資格の合格が要件ですので分かりやすいのですが、①の実務経験による資格要件については分かりにくいかと思いますので、少し補足説明させていただきます。

整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車」とは、①二輪自動車以外か②二輪自動車の2種類しかありませんので、貸切バス事業の場合は①となります。

また、「点検又は整備に関する実務経験」とは、次の経験をいいます。
①整備工場等における整備要員として点検・整備業務を行った経験
②自動車運送事業者での整備実施担当者としての点検・整備業務を行った経験

そして、「整備の管理に関する実務経験」とは、次の経験をいいます。
整備管理者としての経験
②整備管理者の補助者として車両管理業務を行ったの経験
③整備責任者として車両管理業務を行った経験

点検又は整備に関する実務経験は、バス会社やタクシー会社の運転手として日常点検をしていた経験も含まれますので、当該経験が2年以上あれば、点検(又は整備)に関する実務経験を満たすことになります。

なお、当該実務経験については、実務経験を積んだ事業者の代表者からの証明が必要となります。

整備管理者選任前研修については、大阪府の場合、大阪運輸支局で開催されています。

整備管理者選任前研修についてはこちらをご覧ください。
>>整備管理者選任前研修(大阪運輸支局WEBサイト)

なお、整備管理者に選任されたら、選任された年度の翌年度末までに、「整備管理者選任後研修」の受講が義務付けられています。

その後、2年度ごとの受講が必要となります。

地方運輸局長の解任命令を受けて、解任の日から2年を経過していない方は整備管理者になることはできません。

以前は、整備会社等に勤務する方への整備管理者の外部委託ができたのですが、平成19年9月10日以降は禁止されています。

しかし、次の要件を満たすグループ企業内においては、外部委託が認められています。

整備管理者の資格要件

①グループ企業が一体となって安全確保に取り組む体制を確保するため、安全管理規程及び整備管理規程その他必要な規程類について、一定の要件を満足していること。

②外部委託することについて、被選任者及び委託者の代表者又は事業場責任者が同意・承認していること。
③整備管理者が他の業務及び役職を兼ねている場合、その兼職内容及び兼職に係わる事業者間の距離が、整備管理者の業務を行う支障とならないこと。

整備管理者が、自ら業務を行うことができない場合や欠勤、一時的不在等に備えて、整備管理補助者を予め選任しておくことで、一定の条件の下、整備管理者に代わり一定の業務を行わせることができます。

整備管理補助者は、整備管理者の指揮監督の下、業務を実施し、営業所における整備管理が完全に実施される必要があります。

整備管理者は、補助者に対し、代わりに業務を行う者としての資質を高める教育や、業務の監督を行わなければなりません。

整備管理補助者が実施できる業務

①運行の可否の決定
②日常点検の実施の指導
 など日常点検に係る業務に限られています。

整備管理補助者を選任する場合の留意事項

①「整備管理者の資格要件を満たす方」又は「研修等を実施して十分な教育を行った者」から選任
②補助者の氏名及び補助する業務の範囲等が整備管理規程で明確にされていること
③整備管理者が、補助者に対して研修等の教育を行うこと
④整備管理者が、業務の執行に必要な情報を補助者にあらかじめ伝達しておくこと
⑤整備管理者が、業務の執行結果について、補助者から報告を受け、また必要に応じて結果を記録・保存すること

なお、整備管理補助者の選任の届出は不要です。

整備管理者を選任又は解任した時は、選任(解任)後15日以内に、管轄の運輸支局へ届出をしなければなりません。

新規許可の場合には、運輸開始前又は同時に届出を行います。

整備管理者選任届出の添付書類(実務経験による場合)

①実務経験証明書(選任届への証明でも可)
②整備管理者選任前研修修了証の写し
③整備管理規程の写し