貸切バス事業の運賃・料金は、通常は、地方運輸局長が公示する運賃・料金(公示運賃)を届け出る事業者様が大多数です。
そして、輸送の安全を確保するため、当該公示運賃で定められた基準額(下限額)を下回らない運賃で運行することが求められます。
ここでは、貸切バス事業の運賃・料金制度の概要について解説させていただきます。
貸切バス事業の運賃・料金制度の概要
公示運賃とは?
貸切バス事業の運賃・料金の設定・変更は、事前届出制(30日前)となっています。
貸切バス事業の経営には、人件費、燃料費、車両点検修繕費、安全措置に係る経費、保険料等の経費がかかり、これらの経費を反映して、運賃・料金の設定を行わなければなりません。
これをバス事業者側で原価計算等を行って算定し、適切な運賃・料金を設定することは非常に困難です。
そこで、国土交通省が地域内の経済状況や貸切バス事業者の経営状況等を考慮して、基準額(下限額)をけっていして公事しています。
この運賃・料金のことを公示運賃といいます。
この公示運賃で届け出た事業者については、「運賃・料金を設定する際の審査を受けなくてもよい」ことになっています。
ただし、基準額を下回る運賃・料金を収受した場合は、行政処分の対象となってしまいます。
以前は、需要の季節変動に対応するため、基準額を基に+30%(上限額)と-10%(下限額)の幅で公示運賃が示されていましたが、令和5年8月25日からの公示運賃より基準額を「下限額」とする公示方法に見直されました。
公示運賃を下回る運賃を設定したい場合には、「安全コスト審査対象運賃」として、「原価計算書」その他運賃・料金算出のための基礎資料等の提出を別途求められることになります。
変更命令の検討を必要としない運賃・料金の額
収受する運賃及び料金の額が、「一般貸切旅客自動車運送事業の変更命令の検討を必要としない運賃・料金の額」の基準額以上(下記公示運賃参照)のものであって、運賃・料金の適用方法が、「一般貸切旅客自動車運送事業の運賃・料金の標準適用方法」と合致するものであるときは、審査は必要とされません。
令和6年3月1日付公示運賃(近畿運輸局)
車種区分 | キロ制運賃 (1㎞あたり) | 時間制運賃 (1時間あたり) |
---|---|---|
大型バス | 160円 | 7,390円 |
中型バス | 130円 | 6,240円 |
小型バス | 110円 | 5,460円 |
コミューター車 | 100円 | 4,860円 |
貸切バスの運賃の計算方法
貸切バスの運賃は、「キロ制運賃」と「時間制運賃」の合算額となります。
貸切バスの運賃額=(キロ制運賃+時間制運賃)×1.1
キロ制運賃
キロ制運賃は、車庫を出てから各地を回り車庫へ帰るまでの走行キロ数にキロ単価を掛けて算出します。
キロ制運賃=走行キロ×キロ単価
時間制運賃
時間制運賃は、走行時間に、車庫から出るまでの点呼・点検時間1時間と車庫に帰ってからの点呼・点検時間1時間を合わせた2時間(安全運転コスト)を加えたものに、時間単価を掛けて算出します。
なお、走行時間が3時間未満の場合は、走行時間が3時間として計算されます。
時間制制運=(走行時間+2時間)×時間単価
貸切バスの運賃の計算事例
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
大型バス1台を8時出庫の20時帰庫(12時間)で走行距離300㎞で走らせた場合、次のとおりとなります。
時間制運賃:7,390円×(12+2)時間=103,460円
キロ制運賃:160円×300㎞=48,000円
合計運賃:(103,460円+48,000円)×1.1=166,606円
この金額以上の運賃を収受していなければ、「運賃料金変更事前届出違反」となります。
貸切バスの料金
貸切バスの利用料としては、上記運賃とは別に下記の料金を請求することができます。
貸切バスの料金には「交替運転者配置料金」、「深夜早朝運行料金」、「特殊車両割増料金」の3種類があります。
交替運転者配置料金
長距離・長時間・夜間運行などでの安全運行のために、法令により義務付けられる交替運転者を配置した場合に適用できます。
なお、運送申込者と合意した場合でも適用可能です。
キロ制料金 (1時間あたり) | 時間制料金 (1時間あたり) |
---|---|
30円 | 2,320円 |
深夜早朝運行料金
22:00~5:00の間に運行する場合には、2割増の料金を適用できます。
特殊車両割増料金
サロンカー、リフト付きバス等の特殊車両を使用する場合に、設備や購入価格等を勘案した割増率を適用することができます。
貸切バスの運賃・料金の標準適用方法
>> 貸切バスの運賃・料金の具体的な適用方法についてはこちらをご覧ください。
旅行会社への手数料と下限割れ運賃の関係
旅行会社からの斡旋で、断ることができずに基準額を下回った運賃(下限割れ運賃)でツアー客への運送サービスを行ってしまうと、運賃料金事前届出違反となってしまいます。
それとは異なり、契約した運賃自体は基準額を下回っていないものの、旅行会社に対して手数料等を支払った結果、実際に収受した額が公示運賃を下回ってしまう場合もあるかと思います。
旅行会社への手数料自体は、バス会社に代わって営業を行ってもらった対価として支払うものですので、適正金額であれば問題はありません。
しかし、巡回指導時に、手数料を差し引くと公示運賃を下回ってしまっていることが発覚した場合には、運賃料金の割戻し(道路運送法第10条違反)となる可能性があるため、審査の対象となります。
審査対象となった場合、巡回指導員は、国土交通省へ報告することとなっており、手数料等の支払いにより、確保すべき安全コストを阻害していないかどうかについて調査等が行われることになります。
ただ、あくまでも「審査対象」となるだけであって、即違反というわけではありません。
最終的に、手数料等を差し引いた運賃が、輸送の安全を確保するための経費を割り込んでいると判断された場合は、道路運送法第10条違反となり、行政処分が下されることになります。
この場合、旅行業者に対しても、旅行業法に基づき、「業務改善命令」の行政処分が行われることになります。
届出運賃違反による行政処分について
運賃・料金に関する違反についての行政処分は、次のとおりとなります。
違反行為 | 初違反 | 再違反 |
---|---|---|
運賃料金(変更)事前届出違反 | 60日車 | 120日車 |
運賃又は料金の割戻しの禁止違反 | 60日車 | 120日車 |
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