運送業を開業するにあたっては、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や労働保険(労災保険・雇用保険)へ加入しなければなりません。

タクシー・都市型ハイヤー、貸切バス、貨物運送事業においては、運輸開始届の提出時加入していることが分かる書類を提出することになっています。

そして、運輸開始後も、巡回指導時貸切バス事業については更新申請時など、必要な保険に加入し、保険料が適切に納められているかのチェックが入ります。

ここでは、労働保険と社会保険の加入義務にや加入方法等の概要についてまとめさせていただいています。

加入義務がある場合は、どんなに運転手さんが「給与の手取り額が減るから加入したくない!」言ったとしても、その方だけ加入していないという状況は許されませんのでご注意ください。

社会保険や労働保険に関するご相談、お手続きの詳細につきましては、最寄りの年金事務所労働基準監督署にご確認いただきますようお願いいたします。

労働保険には、業務災害等が発生した際に必要な給付を行う労災保険と、失業した方の生活を保障するための給付を行う雇用保険の2つがあります。

運送業の場合、労働者を1人でも雇用する事業所は、適用事業所となります。

労災保険が適用される労働者(適用労働者)であるかどうかは、労働の対象として「賃金」が支払われるかどうかで判断されます。

よって、パートタイム労働者・アルバイト・日雇労働者・臨時雇用者など、名称の如何を問わず、労働関係が認められる限り、適用労働者とされ、労災保険が適用されます。

法人の役員については、原則として加入できませんが、代表権を持たない役員で、実質労働者とみなされるような方は、その限りにおいて労災保険の適用を受ける場合があります。

なお、労災保険の保険料は事業主が全額負担し、労働者が負担することはありません。

運送業の場合、労働者を1人でも雇用する事業所は、適用事業所となります。

事業所に雇用される労働者で、下記に該当しない方は雇用保険の被保険者となります。
・週の所定労働時間が20時間未満の方
・同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方
・季節的事業に4ヶ月以内の期間で雇用され、かつ1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方
・昼間学生

つまり、運送業の場合であれば、週20時間以上で継続して31日以上勤務される方については、すべて加入が必要となります(加入時65歳未満の場合)。

社会保険は、業務災害以外で怪我や病気をした場合等に適切な保険給付がされる健康保険と、老後や介護が必要となった場合に必要な年金給付等を行う厚生年金保険があります。

健康保険と厚生労働保険はセットで加入手続きが行われるため、適用要件は同じとなっています。

運送業をされている事業所様は法人を設立して事業運営をされているところが多いですが、法人の場合強制適用事業となります。

個人事業の場合は、常時5人以上の従業員を雇用している場合に強制適用事業となります。

運送業の場合、適用事業所に雇用される方で、下記の適用除外に該当しない方は、社会保険の被保険者となります。
・臨時に使用される方で、日々雇われる
・臨時に使用される方で、2ヶ月以内の期間を定めて使用される

これらの適用除外の要件は、運転手として選任できない方と同じものですので、あまり気にされる必要はないかもしれませんね。

運送業は一元適用事業(労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付等を一元的に取扱う事業)ですので、従業員を雇用した日の翌日から起算して10日以内に、労働保険成立届及び概算保険料申告書を営業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。

届出が受理されましたら、受付印の押印された届出書の控えが交付されます。

これは、運輸開始届の提出の際に必要ですので、必ず交付してもらうようにしてください。

労働保険の成立手続きについては、こちらをご参照ください。
>>労働保険の成立手続はおすみですか(厚生労働用パンフレット)
※2ページに成立手続の概要、10ページに書類の記入例が掲載されています。

届出が受理されましたら、受付印の押印された届出書の控えが交付されます。
これは、運輸開始届の提出の際に必要ですので、必ず交付してもらうようにしてください。

労働保険への加入手続きが完了後、それとは別に雇用保険適用事業所設置届及び雇用保険被保険者資格取得届を営業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します。

なお、上記書類の提出時に、下記書類の提示を提出を求められます。
・出勤簿
・労働者名簿
・賃金台帳又は源泉徴収簿
・法人履歴事項全部証明書
など

社会保険の加入手続きは、営業所を管轄する年金事務所において、会社設立から5日以内に、新規適用届被保険者資格取得届を提出することにより行います。

新規適用届の提出方法については、こちらをご参照ください。
>>日本年金機構該当ページ

なお、運輸開始届出時受付印の押印された新規適用届の写しが必要となりますが、郵送で手続きされた場合は、当該写しをもらうことができません。

その場合は、その後、事業所宛に届く「適用通知書」の写し等、社会保険に加入していることが分かる書類を提出することになります。

運輸開始届出時受付印の押印された新規適用届の写しが必要となりますが、郵送で手続きされた場合は、当該写しをもらうことができません。
その場合は、事業所宛に届く「適用通知書」の写し等、社会保険に加入していることが分かる書類を提出することになります。

規制改革により、令和2年1月から一定の条件の下、上記労働保険・社会保険の受付を1つの窓口で行なえることになりました。

上記の手続きを年金事務所、労働基準監督署、公共職業安定所のいずれかに一括して提出ができます。

運送事業者にとって、加入条件を満たしている場合、労働保険、社会保険への加入は必ず必要となります。

巡回指導対策などで事業所にお伺いすると、加入条件を満たしているにもかかわらず、手続きがされていない方も見受けられます。

労働保険、社会保険の未加入者がいる場合は、行政処分の対象となりますので、漏れなく加入するようにしてください。

なお、労働保険、社会保険を専門家に頼みたい場合は、社会保険労務士にご依頼ください。